先史時代・縄文時代・弥生時代
〜豊かな自然と豊富な産物に支えられ〜


群馬にて先史時代を語る上で外せないものは「岩宿遺跡」です。
戦前まで、縄文時代以前の遺跡は日本で発見されていませんでした。
縄文時代以前に日本列島には人は住んでいなかったのではないか?という意見が考古学会では大勢を占めていたようです。

そんな最中の1949年、在野の研究者である相沢忠洋が旧新田郡笠懸村(現在のみどり市)の関東ローム層中から明らかに人為と認められる石器を発見し、状況が一変します。
日本の旧石器時代の考古学実証研究は、まさに上州から始まりました!
岩宿博物館:http://www.city.midori.gunma.jp/iwajuku/main.html

全国で旧石器時代の遺跡発掘が進み、現在では数千か所の遺跡から旧石器時代の痕跡が確認されています。
群馬でも、県内での旧石器時代の遺跡数は150か所以上を数え、岩宿遺跡(みどり市)、武井遺跡(桐生市)、下触牛伏遺跡(伊勢崎市)、桝形遺跡(前橋市)、吹屋遺跡群(渋川市)等が次々と発掘されました。
全国的な動きの中で、上州の地は旧石器時代から弥生時代にかけて数々の遺跡が発見され、上州は古代においてはかなり大規模な人口集積地域であった事がわかりました。

その理由としては、後背に山地を抱え、平野が開き、大河の流れる上州は地味豊かで産物に恵まれていたことが挙げられます。
また、多数発掘された石器に使用されている石材は県内産の他に隣県である栃木や長野のものもみられました。
これは、旧石器時代から既に多地域との人や物の交流・交易が行われていたことが推察されます。

先史時代から縄文時代にかけての狩猟文化の時期には鹿、猪、兎等の動物を狩っていたり、山や森に入れば独活、薇、山牛蒡、栗、胡桃、百合根、椎の実、果実類、茸類等が豊富に採取出来たことでしょう。
また、ナウマンゾウやオオツノジカなどの大型動物も捕食対象になっていたことを伺わせる遺構も出土しているようです。
さらに、当時は利根川を鮭が遡上してきていたようで、河川で漁等も行われていたようです。

縄文時代中〜後〜晩期に入ると、だんだんと「ムラ」が現れるようになり、狩猟により移動する形から定住し周辺の資源を利活用したり半栽培したりする人々が徐々に増えてきます。
代表的な例としてみなかみ町にある「矢瀬遺跡」や榛東村にある「茅野遺跡」等が有名です。

矢瀬遺跡では、直径50センチクラスの木材による高床建築物の跡や祭祀場、水場等の跡が発掘されています。
遺跡北側の「目」の字状に配石された四隅袖付炉をもつ全国唯一の独特な家屋跡が発掘されました。
また水場は湧水の周囲を石垣で囲い、立石列の配列や石組みにより排水路を設けている形等が確認されています。
水場回りからは木の実や石皿が出土していることから、製粉や灰汁抜き作業が行われていたと推察できます。
矢瀬遺跡公式サイト:http://www2.odn.ne.jp/mcr/yaze/index03.html

茅野遺跡では、竪穴住居跡が多数発掘されるとともに、耳飾り、石板等が大量に出土しました。
特に石板は材料を検証したところ、東北産であることがわかり、この時代でもかなり広範囲な人間通しの交流があった事がわかります。
榛東村の歴史サイト:http://www18.ocn.ne.jp/~hatiman/newfolder1/

県内では竪穴住居の他に敷石住居跡も多数発見されており、みなかみ町の「大穴石器時代住居跡」等は国内でも昭和初期という早い時期から敷石住居跡が確認されていました。

その傾向を引き継いで弥生時代に突入すると、さらに人口を増やし集落は増えていきます。

高崎市の「日高遺跡」では水田の畝畔や水路、それにムラが発見され、定住・農耕がおこなわれた跡がはっきり残されていました。

富岡市にある「中高瀬観音山遺跡」では紡錘車、土製勾玉、ガラス玉が出土するとともに集落は東西200メートル、南北350メートルの規模の集落が確認されています。
集落中央部の住居地域の周囲は柵で囲まれ、集落内部を区分する濠のようなものも確認されています。
このような大規模な環濠集落であったことから、中高瀬観音山遺跡は発見当初「東の吉野ケ里」とも呼ばれていました。

また、川場村の「高野原遺跡」では発掘された住居跡7棟のうちの6棟が焼け落ちた痕跡が確認され、戦乱によるものではないか?と推察されています。
この遺跡で発見されている弥生式土器は、東海地方等で産出するものに類似しており、長距離での交流もしくは大規模ば移住等があったのようです。

こうして、狩猟生活から定住生活に移行し、集落が生成されていく中で地域毎に権力を強くした「リーダー」が生まれ始め、古墳時代へと向かっていきます。


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