上毛風土記　江戸時代の上毛

いつもの事ながら時代区分の明確な日時は決められません
ですが、豊臣政権崩壊と徳川家による関東支配は明確に時期が区別されるものでもありません。

そこで、上毛地域、ひいては関東地方の大半の支配体制の基礎を作った点について、小田原攻め終了後に、徳川家康が羽柴秀吉の命令に従って関東に本拠地を移転した時点を「徳川家による関東支配のはじまり」と見ることが出来るのではないかと思います。

※細かい情報
　　　「豊臣秀吉と徳川家康」という風に名前を並べるのは厳密にはちょっとおかしいのです。
　　　日本は古来から「氏と名字」が別な考え方があります。
　　　「豊臣」は羽柴秀吉が関白任官の際に朝廷より「新たな氏」として決められたもの
　　　「徳川」は松平元康が勝手に名乗った後、朝廷に申請して許されたもので、単なる名字
　　　　　　徳川家の本氏は「源」←これもいろいろ議論はありますけどね（笑）
　　　なので、格的には「豊臣＝源」とか「羽柴＝徳川」くらいの考えで見ればＯＫです・
　　　源頼朝を「みなもとのよりとも」と読むように、氏と名の間には「の」を付けるのが慣例
　　　「＜藤原道長＞ふじらわのみちなが」みたいな。
　　　だから「豊臣秀吉」は「とよとみのひでよし」と読む方が昔の慣例どおりなんでしょうね。
　　　でも、明治以降、秀吉人気に押されてあまり、そういう呼び方は浸透しなかったようで・・・
　　　ま、細かい話ですので普通に話題にしても誰も気にしないのであくまで参考程度でｗ

関東入府に際して、当時は佐竹氏ががっちり押さえていた常陸等の地域を除く大半が家康に小田原攻め後の報償として与えられました。
実際は、家康が旧来から支配していた故地である東海三国（駿河・遠江・三河）と、本能寺の変によるどさくさ紛れに侵略・支配した甲斐・信濃を秀吉が没収し、代替えとして関八州を与えたという構図があるのは事実でしょう。
その中に上野国も入っていたわけです。

上野は、戦国時代以前から交通の要衝であり、収益の多い国であったため、上杉・武田・北條等の草刈り場になっていました。

そういう経緯の中、統一した支配体制がなかったことから、家康入府の際に取られた措置は細分化され小領主や旗本領・幕府代官支配等の土地に細分化されてしまいました。
これは、別に上野に限った話ではなく、家康の関東支配の中では他の国でもよくある話ではありましたが、江戸時代を通して「上野一国」という事は終ぞありませんでした。

藩名	最大石高	領主家の変遷
沼田藩	4万石	真田家→幕府直轄→本田家→黒田家→土岐家→廃藩置県
前橋藩	17万石	平岩家→酒井家→越前松平家→（川越藩：前橋陣屋時代）→越前松平家→廃藩置県
安中藩	3万石	幕府直轄→井伊家→水野家→堀田家→板倉家→内藤家→板倉家→廃藩置県
高崎藩	12万石	井伊家→酒井家→戸田松平家→藤井松平家→安藤家→大河内長沢松平家→間部家→大河内長沢松平家→廃藩置県
伊勢崎藩	5万石	稲垣家→酒井家→（前橋藩組入）→酒井家→廃藩→酒井家→廃藩置
七日市藩	1万石	幕府領→前田家→廃藩置県
吉井藩	2万石	菅沼家→幕府直轄→堀田家→幕府直轄→鷹司松平家→版籍奉還（岩鼻県組入）→廃藩置県
小幡藩	3万石	奥平家→水野家→永井家→織田家→奥平松平家→廃藩置県
館林藩	25万石	榊原家→大給松平家→徳川家→幕府直轄→越智松平家→太田家→幕府直轄→太田家→越智松平家→井上家→秋元家→廃藩置県
総社藩	3万石	諏訪家→秋元家→廃藩
那波藩	2万石	松平大給家→酒井家→廃藩
板鼻藩	3万石	里見家→酒井家→廃藩
上野豊岡藩	1万石	幕府直轄→根津家→廃藩
大胡藩	2万石	牧野家→廃藩
白井藩	2万石	本多家→戸田松平家→井伊家→西尾家→西尾家→本多家→廃藩
青柳藩	2万石	幕府直轄→近藤家→廃藩
上里見藩	2万石	幕府直轄→奥平松平家→廃藩
篠塚藩	2万石	幕府直轄→奥平松平家→廃藩

　　　上記の表の石高は四捨五入した数字です。
　　　また、支配開始の家は、家康入府の1590年を基準年にしています。
　　　幕府直轄と称しているものには、1万石以下の旗本領も含まれます。　

　　　なお「藩」というのは便宜上つかわれていた言葉で、江戸時代では公式的に使われていた言葉ではないようです。
　　　個々の文書等では、わかりやすく説明するために用いていた例はあるようですけど。
　　　明治維新後、歴史を整理する中で、大名家等の支配領域を説明するためにおおっぴらに使われだしようです。

いわゆる「江戸300藩」と言いますが、実際に「最盛期で三百藩が並立していた」というわけではなく「のべ三百藩」というのが正解でしょうけど、まぁ、他の国でも同じような状況はあったかと思います。