上杉謙信 〜山の向こうの越後の龍〜


享禄三年〜天正六年 越後生まれ
言わずと知れた戦国時代のスーパースターですね。なので細かい事はいちいち説明しません。
越後守護代長尾為景の三男(四男とも)として生まれ、その後兄晴景の養子となり越後守護代を継ぎます。
越後統一後は、北信濃の国人の求めに応じて武田信玄と川中島で争ったり、上杉憲政の求めに応じ関東に出兵したり。
その最中に、憲政より上杉家の名跡と関東管領の位を譲られます。
生涯不敗・・・とは作りすぎな話ではありますが、大名としての勝率は断トツでしょう。
関東出兵を繰り返しながら、上洛も二度行い、晩年は越後から能登・加賀まで進出し織田軍団をも手取川で撃破。
まさに破竹の勢いの中、大規模出兵準備中に昏倒し、そのまま永眠。享年49歳。

さて、上州群馬と上杉謙信のつながりですが、上記にもあるとおり、そのものずばり関東出兵関連です。
謙信が関東に出兵する端緒となった事件は、北條氏の関東制覇行に伴う山内上杉家の没落と越後亡命です。
平井城にいた上杉憲政は、北條氏の攻勢に耐えかねて沼田、そして越後に亡命し、当時から既に有名であった長尾景虎を頼ります。
義理堅く権威を尊ぶ景虎は、関東管領の威光を復権させるべく関東に出兵し、一時は小田原城を包囲するまでに関東を蹂躙します。
結果的にはあまりうまく行かなかった関東出兵ではありますが、その最中に上杉家の名跡を継ぎ上杉謙信となったわけです。
なお、関東出兵に関しては藤木久志氏が著書『雑兵たちの戦場』で「略奪が目的だった」的に述べていますが、その意見には違和感を覚えます。

越後から関東に出るには、三国山脈を越えるにしろ、信濃経由にするにしろ必然的に上州を経由しなければなりません。
信濃経由では時間もかかる上に武田信玄と正面切って争う必要があるため、謙信は三国山脈を越えることとします。
生涯で都合17回(中には部将に任せたものもある)にわたり、越後勢は三国山脈を越えます。
用いたルートは三国峠、清水峠の2ルートだったようですが、三国峠が主流だった様子
上杉謙信が越山した道のりは、個人的な興味もありますので別項で紹介したいと思います。

峠を越えた謙信率いる越後勢は小川城、名胡桃城、明間城、沼田城、岩下城、白井城、那波城と次々と北條方の諸城を攻略
最後に現在の前橋市にある厩橋城を攻略し、ここを関東経略のための拠点としたそうです。
その後は越後勢が越山すると、関東の諸将は上杉に頭をさげ、越後勢が引き揚げると北條氏がそれらを攻略したり、諸将は北條氏に下ったりといたちごっこ
さらに武田信玄が箕輪城を攻略し西上州を手中に収めちゃったり、東毛の雄である由良氏が北條氏と密接に結びついたりと、なかなか上州は安定しません。
謙信病没後は、謙信が後継者を明確に定めていなかったことから、御館の乱が勃発し上野は結果として武田氏と北條氏に二分されることになりました。
歴史にIFはありませんが、謙信が明確に「景勝は越後国主として越後一国を、景虎は関東管領として上州一国を」と定まっていれば。
御館の乱がおきずに、北條氏も縁者である上杉景虎が上野一国を持てていれば、第二次越相同盟もあったかも。

ところで、謙信といえば生涯女犯せずで有名ですが、原因が上州での出来事という説話があります。
謙信若かりし頃、関東出兵の折、上州平井城の城主千葉采女が参加する上で娘の伊勢姫を謙信(当時は景虎でしょうか)に差し出したところ、二人は恋に落ちました。
謙信は伊勢姫を側女にしようとしますが、柿崎景家ら重臣の反対により断念。
伊勢姫はショックで青龍寺に引きこもり、剃髪し出家井。そののち自害してしまったそうな。
謙信はこれにひどく心を痛め、生涯女性を側によせなかったとかなんとか。
(オチとして、柿崎景家が最後には謙信に手打ちにされる遠因になっているとか)
・・・まぁ、伝説の域を出ませんが。
千葉采女という人物の存在もはっきり確認できていませんし。

それともう一つ、赤谷湖の畔にある宮野城に関東出兵の際に謙信が滞在したところ、滞在した日が申の年、申の月、申の日であったとか。
その時、吉夢を見た謙信が「自分も申年だから、この地をの名を『申ヶ今日』に改めよう」となったとか。
それが現在の「猿ヶ京温泉」ですが、実際謙信自身は寅年なので信憑性は・・・ですけどね
ちなみに赤谷湖は相俣ダムによる人造湖ですので、宮野城も今は湖畔にある要害に見えますが当時は別の見え方をしたかもしれません。

越後の龍 上杉謙信
双眸に見ゆる三国山脈、越後からみれば行く手を阻む壁であり、上州から見れば帰郷の想いを断ち切る断崖であった事でしょうか。
もし、関東の諸将が越後の龍が持つ「毘」の旗も下で一致団結し、その結束が永続していれば・・・

四十九年 一睡の夢 一期の栄華 一盃の酒

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